キーボードのスイッチの種類
前回の記事ではコンパクトキーボードについて思うところをアレコレと書きましたが、今回はキーボードのキースイッチについてあらためて整理してみたいと思います。
キースイッチの種類をざっくりわけると、メンブレン、メカニカル、静電容量無接点式の3つに分類されます。
メンブレン
概要
メンブレンとは「膜」という意味なのですが、その名のとおり薄い膜上のシートにある接点部分を押し込むことで、導通させ、キーの押下を判断する仕組みのこと。
絵心がないなりにInkScapeで描いたモノなので縮尺とか色々アレですが、雰囲気が伝われば幸いですw
キートップの裏側が突起しており、それをシリコン製のラバードームで包んでいます。このドームが押し込まれるとスイッチが接地し、キー入力があったと判定されるわけですね。指を離せばゴムの反発でキーが戻るというわけです。
メンブレンの特徴
- 構造が単純で大量生産に向いているため、安価に作れる。
- 構造が単純なため水にけっこう強い。防水をうたう製品も多い。
- なので、キートップを外して洗うのもけっこう簡単。
- キーの音はキートップと本体が接地するときのカチャカチャ音が一番大きいかな。
- 逆にいえばそこさえなんとかすれば静かに出来るため静音キーボードも多い。
- 打鍵感はゴムを押しているような感覚(実際ゴムを押しているのだから当たり前)。
基本はラバードームの反発力でキーを戻しますが、一部製品ではスプリングを入れているキーボードもあるようです。疑似メカニカルなんて呼ばれることもあるようです。
メンブレンの派生=パンタグラフ
メンブレン式かパンタグラフ式か、みたいに別個で扱われることも多いですが、パンタグラフはメンブレンの一種です。
キートップの裏側につけた突起で押し込む方法だとキーの端っこを押したときにうまく接地せず、キーが反応しないことがあります。その弱点を克服すべく、パンタグラフ(ひし形の機構)でキートップを支え、端っこを押したとしてもちゃんと真ん中に力を伝える仕組みにしたのがメンブレンのパンタグラフ式。
メンブレンシートを押し込むという方式は変わらないわけです。
パンタグラフの特徴
- キーの端っこでもちゃんと反応する。
- キーを薄くすることが出来る。
- ラバードームのみの構造よりは部品が増えるので、ややコストが上がる。
- 音はカチャカチャ音だが、キーストロークが浅い分、静かになりやすい。
- キートップとパンタグラフの接続はデリケートなので力任せに外すと折れて壊れやすい。
- つまり単純なメンブレンよりは掃除がしづらい。
キースイッチを薄くしやすいため、ノートPCでの採用が多く、デスクトップ用途でもコンパクトキーボードで採用されがちですが、別にキーストロークを深く作れないわけではないです。
ほとんどがキーストローク2mm未満の製品ばかりですが、一部3.8mmのキーストロークを持つ、「ディープストロークパンタグラフキーボード」なんてのもあります。
こういうの。
使用感としては前回紹介したBUFFALOのゲーミングキーボードBSKBC02BKに近いらしく、それはつまり静電容量式っぽい打鍵感ということです。
まぁホンモノの東プレRealforceを使っている人からしたら全然違うわ!となると思いますが、(ぼくを含め)これ系のメンブレン+αなキーボードが静電容量式に近いと感じる人はそこそこいるようなので、気になる方は量販店などで試し打ちしてみるのも良いのではないでしょうか。
安価な分、材質自体は安っぽいのであんまり期待しちゃダメですけどね。
メカニカル
概要
メカニカルキーボードはキースイッチのひとつひとつにスプリングとスイッチを備えた昔ながらの古い仕組みのキーボードです。
うーん、あんまりうまく描けませんでした…。
最近はなぜか高級キーボードの代名詞になっていますが、ぼくみたいなおじさんにとっては「え…いまどきメカニカル?」と驚くくらい古臭い感じがしてしまいます。
いやだって、ぼくが昔使っていたパソコン…DOS/V機なんて呼ばれていた時代のパソコンはメカニカルキーボードばかりでしたもの。カチカチカチ…ターン!カチカチカチカチカチ…タターン!という大音量がオフィスに響き渡っていたものです。
給料をコツコツ貯めてはじめて買った40万円くらいのデスクトップPC-486に付いてたキーボードもメカニカルでした。あまりに嬉しくて毎晩使いまくっていたら家族からうるさくてテレビの音が聞こえないよ、なんて邪険にされたものですw
ただ、まぁ良いものだとはわかるんですよ。
なにせキースイッチひとつひとつがカスタマイズできるので、キーストローク、キーの重さ、スイッチの音量等、自分好みのスイッチを選ぶことができます。
例えば、いま有名なのだとドイツのCherry社が製造しているCherry軸でしょうか。
名称 | クリック感 | キーの重さ |
---|---|---|
茶軸 | あり | 約45g |
黒軸 | なし | 約60g |
青軸 | あり | 約50g |
赤軸 | なし | 約45g |
こんなふうに軸の種類によって、クリック感のあるなしやキーの重さが違うため、それぞれ自分の好みに合わせて選べるわけです。
青軸は本当に昔ながらのメカニカルキーボードらしい大音量なので、試打したときはなつかしい気持ちになりました。人気のスイッチは音が控えめになった赤軸、茶軸あたりのようで、静音性重視のピンク軸なんていうのもあるみたいですよ。
あと、Cherry軸の特許が切れたとかで、最近になって中華製の安価なメカニカルキーボードも増えてきました。
何でもそうですが、高いモノが(自分にとって)良いモノとは限らないので、安価な価格でお試し気分で購入できる製品が増えるのは良いことかも知れません。
メカニカルキーボードの特徴
- キーの端っこを押すと反応しない、などということは基本的にない。
- 好みに合わせてキータッチが軽いものも、重いものもある。
- 独特なクリック感を楽しめる。(軸による)
- メンブレンに比べるとコストがかなり高い。
- 音が大きい。赤軸やピンク軸など比較的小さなものはあるがそれでもメンブレンよりは大きい。
- チャタリングが発生する可能性がある。
チャタリングとはキーを1度だけ押したはずなのに予期せず連続で入力されてしまう現象のことです。図解したとおり、接地面がわりとデリケートな作りなので、経年劣化によりこういうことが発生する可能性があります。
なので、一概に高耐久と言って良いかは悩ましいところ。
静電容量無接点方式
名前はイカツイ感じですが、何のことはない非接触の静電容量スイッチなんですよね。
完全に接触しなくても、キートップと基盤までの距離が電荷の容量値でわかるため、物理的に接触させる必要がなく、耐久性が更に向上したとのこと。でもさ、この図解を見る限りバネはあるわけですし、耐久性云々についてはあんまり鵜呑みに出来ないかなぁ。
一応、HHKBとか公式で3000万回以上のキー寿命と書かれていましたが、メンブレンでも2000万回とかあるので、うーん、どうなんでしょうね。
この静電容量無接点方式は見てのとおり、物理的には単純な構造にできるのですが、電荷の容量値を判定する回路部分が複雑でコストがかかるようで、けっこうなお値段のキーボードになってしまうのが難点です。
ぼくの理解力が足りないのか、静電容量無接点方式の利点がいまひとつ見えてきません。
RealForceとかHHKBのキーボードとしての作りは素晴らしく、触り心地や、キーの場所によって重さを変える配慮など、さすが高級キーボードと思えます。
ただ、静電容量無接点方式にする必要あるのかな、というのがどうにも疑問なんですよね。
特に最近はメンブレンでキーが軽かったり、斜めからの押し込みに強いものも出てきたので、メンブレン式での高級キーボードがあっても良いと思うのですが、うーん、それは難しいのかなぁ。