突然尻から血が出て診察受けたら腸内憩室出血で即入院になった話(2日目)
前回記事の続きです。
前回までのあらすじ
深夜にお気に入りの音楽を聴きながらノリノリで体を揺らしていたぼくは、ふと便意を催したためトイレへ駆け込んだところ、便器が真っ赤になるほどの血便に驚愕。
寝て快復に努めようと横になるも下痢の症状は収まらず、深夜1時頃から1時間ごとに計6回もの血便を出してしまう。最後のほうは一瞬意識が遠のく症状もあり、これはマズイと朝9時になると同時に近所の診療所へ。
診療所の先生からは憩室出血が疑われるので大きな病院へ行くよう強く勧められ、その足でタクシーを拾って病院へ向かった。
しかし病院の受付で初診の説明を受けている最中に意識を失いかけたところを受付嬢に助けられ、担架で診察室まで運ばれる事態に。
その後はあれよあれよという間に服を脱がされ、点滴を打たれ、血圧も測られ、車椅子に載せられてレントゲンやCTスキャン、各種身体測定なども受け、気がつけば豪華な個室に入れられていた。
受付時点では36.4度だった体温がいつのまにか38度以上まであがっていたこともあり、隔離する必要があるための措置だったらしい。そしてPCR検査を受けた後、その日のうちに内視鏡手術まで受けることとなった。
術後、いったいぼくはどんな手術を受けたのだろう…と不安に思いつつも睡魔に勝てず、病室で眠りにつくのであった。
世界から隔離される
翌日の入院1日目は慌ただしい前日とは打って変わって静かな日でした。
朝6時頃、「起床のお時間となりました」という控え目な音量の起床放送が流れたものの、前日早く眠っていたこともあり、とっくに起きていたぼくは何となく高校の頃の寮生活を思い出し、当時は「起床ー!起床ー!」と叩き起こされていたなぁ、などとぼんやり考えます。
それにしてもやることがない。普段なら朝起きたらゴミ出し、料理、食事、そんでもって運営している複数のサイトのメンテナンス状況(ほとんど自動化されている)をチェックし、必要であればプログラムの改善等を午前中のうちにやってしまうのが日課ですが、ゴミ出しもなければ食事もない(点滴打ってるし)、着の身着のまま来院したのでパソコンだってない。そもそも部屋から出ることも親族との面会すら禁止されています。
ただただ、静かな病室のベッドの上でぽつんと座りながらボォーっとします。まぁたまにはこんな日も悪くない。
しばらくすると看護師さんが現れ、検温と血圧/脈拍を測ってくれます。
看「38度ですか。お熱高いですねー。血圧は119/78で正常。」
看「ん~~~、脈拍111は気になりますねー」
僕「あー自分でも脈が波打っているのがわかります」
一瞬、看護師さんを見て胸が高鳴っているからですよ、などと冗談を返しそうになりましたが、ケツから血出して担架で運ばれたやつが何言ってんだって自分で笑えてきたので、普通に返答しました。
看護師さんがいなくなった後、少し気になったのでスマホで調べたところ、血を失った後は足りない分を補うために脈拍が早くなるのが普通らしい。内視鏡手術で500mlくらい血を失ったし、そもそもその前に6回もドバドバ血便出しているのでそりゃ血が足りないよね…と納得。
その後は7時から朝食のアナウンス、8時から先生の回診が来ます。回診は例の仏頂面先生。
医「どうですか。気分が悪いとかありますか。」
僕「おかげさまで気分はとても良いです。さすがに立つとめまいはしますが。」
医「血が足りないからねぇ。それじゃ。」
はやっ…! 回診って一言話して終わりなのか。こう、内視鏡手術で何をした、とか話さないの???
とは思うものの、そもそもぼくは急患で予定外の手術だっただろうし、いまはコロナ禍で病院もクソ忙しいだろうにクソで入院なんて………うん、まぁそこはいいやw ともかく、忙しくていちいち長話なぞ出来ないのでしょう。
それとなーく看護師さんに聞いたときも、
看「ハハ…。先生、すーぐ検査室行っちゃいますからね~。」
と苦笑い。
あぁそれだけ検査が立て込んでいるのだなぁ。近所の診療所の先生は患者の心のケアを大事にしてくれたけれど、病院が大きくなると患者の数も増えるから、数をこなすことを優先するのかもしれない。どっちも大事なことだし。
PCR検査の結果は無事陰性
続いてにこやかな笑顔が素敵なPCR検査をしてくれた先生と看護師さんが現れます。
医「PCR検査の結果ですが無事陰性でしたよ(にっこり)」
僕「おぉ良かったです」
前日のうちに簡易検査キットの結果は陰性と聞いていたのでそこまで心配はしていませんでしたが、PCR検査の結果を聞けて一安心。
看「それで、本来は4人部屋へ移って頂くのですが、現在空きがないのでもう1日この部屋を使ってください」
僕「あ、はい。ぼくのほうは問題ありません。」
やはり今の時期、病床が埋まりまくってるんですね…本当に申し訳ないなぁ。
しかし、この豪華な部屋、差額ベッド代が相当取られるんじゃないだろうか…。昔、知り合いから医療保険の勧誘受けたときの説明では入院日額1万円の保障があれば個室差額ベッド代の足しに出来る、という話だったから、少なくとも1日15,000円以上は確定だよなぁ。
僕「ちなみに何日くらい入院になるのでしょうか?」
看「この後、入院計画が出るはずですが、最低でも4日以上にはなると思いますよー」
僕「え!そんなにかかるんですね」
なんか手術も終わったし、この点滴外せばもう帰れるくらいの気持ちでいたのでかなり驚きました。
5日後までに終わらせないといけない仕事があるのだけれど、うーん、ギリギリ間に合うかなぁ。
緊急連絡先と連帯保証人に悩む
そして入れ違いのように今度は事務服を着た職員の方が訪れます。千客万来だな。
事「こちらが入院に伴う必要書類になりますので署名をお願いします」
僕「はい。あれ、緊急連絡先が2つも必要なんですか?」
入院に関する同意書に署名捺印する必要があるのですが、そこには緊急連絡先を2箇所書くように注意書きされており困ってしまいました。連帯保証人の欄まであります。
うちの父親はガンで53歳という若さで亡くなっていますし、母親もその後ガンで亡くなっているのでうちには両親がおりません。ぼく自身はバツイチ/子ナシなので配偶者も子もいない状態。
一応、兄弟が1人いますので、なんとかお願いすれば緊急連絡先にはなってくれるだろうけれど、2箇所は無理。
その旨、事務の人に伝えると、病院という何があるかわからない環境なだけに緊急連絡先はものすごく大事なのだとおっしゃいます。「お願いできるお友達はいらっしゃいませんか」などと聞かれますが、いや、その、そんなお友達おる?w
そりゃ若い頃は学校での繋がりや同期入社の繋がり、趣味の音楽レッスンなどの繋がりでもプライベートなつきあいをする友人たちがいました。しかしぼくももう40代も半ば。29歳で起業してからは特に会社を大きくすることもなく、ずっとこじんまりと個人事業レベルでやってきたため、同僚と呼べる人もいないし、何十年も旧友とマメに連絡を取るほどコミュ力も優れていません。
一応年賀状のやりとりするくらいの知り合いはいますが、いきなり知り合いレベルの人から緊急連絡先になってくれ、なんて言われたら困らない?w
まぁ、本っっっ当にどうしてもと言うなら、恥を忍んで薄いつながりの知人にお願いしますけれども、できればしたくない。そんなこんなをやんわりとオブラートに包んで言葉を濁したところ、しぶしぶながらなんとか緊急連絡先をひとつで許して頂けました。友達いなくてほんとすみません…。
尚、連帯保証人のほうは入院費用を一括で即日払うと言っても省略させてくれませんでした。
うーん、兄弟仲もそれほど良くないし、連帯保証人なんてお願いしたら嫌な顔されるのわかっているから出来れば避けたかったのだけれど、しゃーない、後で頭を下げましょう。
1週間の入院が確定
入院に必要な書類を書き終わると、今度は入院療養計画書を渡されました。
入院療養計画書 病名 消化管出血 症状 血便 治療計画 精査入院 検査内容 大腸内視鏡検査、CT検査など 手術内容 未定 推定される入院期間 2021年4月1日~2021年4月7日まで 特別な栄養管理の必要性 無 その他 諸検査と治療のための援助・処置・指導
経過観察 異常の早期発見、早期対応
感染の予防、環境の整備
退院指導(食事、生活、運動など)を行います。
注1)病名等は、現時点で考えられるものであり、今後検査等を進めていくにしたがって、変わり得るものであります。
注2)入院期間については、現時点で予想されるものであります。
僕「…………え!1週間も入院になっちゃうんですか!?」
事「あくまで予定なので早まる可能性もなくはありませんが、そのあたりは先生とご相談頂ければと」
僕「わかりました」
服装からして一目瞭然ですが、あくまで事務の人なので、入院期間云々については先生と相談するしかないようです。そりゃそうよね。
事務の人は同意署名した書類を持つとそのまま去っていきました。
せっかくなので頂いた病院のパンフレットを何気なくめくっていると各病室の設備や差額ベッド代について書かれているページに目が留まります。
あぁ、そうだ、ちょうどこの豪華な個室の差額ベッド代を知りたかったんだった。えーとどれどれ、電動ベッドにトイレ・バスルーム・テレビにソファも付いている個室だからこれだよなぁ… なにィィ!?差額ベッド代33,000円!?
2日は確定だから少なくとも66,000円!?
入院とかしたことないので想像もできないけれど、手術費用だってかなりかかるだろうし、どのくらい請求されるんだろうなぁ。
コロナ疑いの隔離だから免除や割引とかあったりするのかなぁ。そいや差額ベッド代って必ず患者の同意が必要だって聞いたことあるけど、口頭でも同意とみなされるのかなぁ。
…うーん、今から心配しても仕方ないけれど、ウン十万単位のお金が出ていく覚悟はしとこう。もっとひどいことになっていた可能性だってあるのだし、命には変えられないよね。
絶食4日間確定の悲しみ
それはそれとして、ごはんのアナウンスが気になる。
朝~昼~晩と、3回「食事の時間になりました。歩ける患者さんは食堂まで云々」というアナウンスが流れるけれど、ぼくはこの部屋から出ることを禁止されています。
正確にはPCR検査は陰性だったので同じ階なら出歩けるのだけれど、別の階の売店までは行ってはいけないレベル。どうやら首から下げている診察カードの紐の色で区別されているらしく、後ほど紐の色を変えるまでは職員に止められてしまうから別の階へ移動しないようにとお願いされています。
ともあれ、点滴を打っているので飢餓感はないものの、腹はグゥグゥ鳴ります。すると、その日の夕方頃、今度は別の医者が現れました。なんかすごいイケメンです。笑顔もさわやか。なんだ、おい、勝ち組か?
医「ご気分いかがですか~(にっこり)」
僕「点滴のおかげもあるのか、だいぶ元気になりました。ところでこの点滴はいつごろまで…?」
医「これはしばらく続けさせてください。というのも、今の状態で食事をするとまた出血がはじまってしまう可能性があるんです。」
僕「!?!?」
医「もうすぐ土日を挟むじゃないですか。正直、土日は医師の数も減るので、そのタイミングで出血が再開、なんて事態は避けたいわけです。」
僕「なるほど、ということはあと最低4日間は…」
医「はい、マニュアル対応で申し訳ないですが、4日間は絶食。その後は流動食、おかゆ、と徐々に硬い食事にして様子を見させてください。すみません。」
仏頂面先生とはあまりにも違う対応で驚きましたが、どうもあの仏頂面先生が主治医とやらで、このさわやかイケメン先生が担当医というやつらしい、とベッドの上に貼ってあるネーミングプレートを見て理解しました。
しかしこれは困った。ただでさえ、ヒマな上に超絶な空腹。いや、飢餓感はないんだけど、体が食べ物を求めるというか。なんだこれ。
そして気を紛らわすように、スマホで「入院なう」などとツイートしながら、千客万来だった入院1日目が過ぎていくのでした。